天正3年(1575)5月——。 長篠の戦いにおいて、武田軍は三倍の兵力を擁する織田・徳川連合軍の前に、壊滅的な敗北を喫する。撤退という道も残されていたはずの彼らは、なぜ無謀ともいえる決戦へと突き進んだのか——。 長篠城を包囲する武田陣営に、織田信長自らが大軍を率いて来援するとの急報が届く。陣中は騒然となり、武田勝頼とその佞臣ら主戦派、そして信玄の恩顧を受けた宿老たちによる慎重派は鋭く対立。信長・家康との雌雄を決する覚悟を固めていた勝頼は、武田家の象徴たる「御旗」「楯無」に決戦を誓う。もはや、後には引けない。この決断に反発した重臣たちは密かに結集し、いかにして合戦を回避するかを巡って軍議を重ねる。武田家を守るために戦を避けるのか、それとも武門の誇りを貫くのか。揺れる思惑のなか、陣中に現れたのは、美濃岩村城代・秋山虎繁と、その妻であり信長の叔母でもあるお艶の方だった。二人は、ある“秘策”を携えていた。
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